見出し画像

足と脚の協調性を引き出すコツについて

バイクフィッティングシステム“idmatch”は、足のアーチを基準にサイクリング専用フットベッドを設計しました。その有用性について、開発者のひとりルカ・バルトリが、足と脚の協調性を引き出すアライメントとペダルシステムについて解説します。

フットベッドの役割

Q:フットベッドが足のアーチをベースに考えている理由は?

A:大前提として、足、足首、ヒザ、骨盤をつなぐ一連のチェーンがねじれなく、同一面上に並んで動くことが、バランスのとれたポジションの基本です。サイクリングであれば、クリート位置・角度の設定とフットベッドの選択。サドル選びとその位置の設定。これがバイクフィットの成功の90%を占めます。
 
足の重要性は建物における基礎工事と同じです。ここが定まらないとピサの斜塔のように正立しません。足の形状は骨が決めるのではなく、筋肉や靱帯の状態によって変化します。問題があると足首、ヒザ、骨盤に歪みが生じ、痛みを引き起こす可能性があります。足の形状に合ったフットベッドを選択すれば、足の軸が安定するため足首、ヒザ、骨盤の歪みを防ぐことができます。

Q:歩行用と自転車専用フッドベッドの違いは?

A:自転車用と歩行用では異なるフットベッドが必要です。歩行時は身体を支えるポイントは踵(かかと)からつま先に向けて移動しますが、 ペダリング時は足の前方、5本の中足骨の前端の中心が支点になります。この事実が足の挙動に大きな影響を与えるのです。


Q:クリートセッティングで気をつけるべきことは?

A:大切なのは、クリート前後軸とカカトから第2指を結ぶ線(足の軸)がまっすぐに重なるよう、クリートをシューズに正しくセットすることです。

足の軸とはカカトから第2指を結ぶ線と考えます。


脚がまっすぐに伸び、軸にズレがなく発達すれば、大腿骨、脛骨は正しい相関関係にあります。しかし、足の内反・外反の動きに関係するショパール関節(横足根関節)に歪みが生じると、中足骨とカカトの位置関係が変化します。

ペダリングしている時、足が内側に傾くと、交差する脛骨は内側に回転するのが自然な動きです。つまり足だけでなく、脚でなにが起こるかも分析すべきなのです。これらの動きを的確に理解して問題を解消することはペダリングの効率を上げ、障害を防ぐことにつながります。

スポーツ人間工学が導き出した、ペダルとシューズの正しい位置を知る

また、年齢を重ねると、筋肉がこわばりアーチが高くなり、重心が外側に移動するサピネーション(回外)状態になります。同時に脛骨は回転し、ヒザと骨盤に影響して、足の軸がクリート前後軸からズレるのです。 それを防ぐのが、フットベッドとクリートのセッティングなのです。

Q:idmatchフットベッドの骨格構造の狙いは?

A:プラスチックの骨格には2つの狙いがあります。1つはアーチ形状を安定させつつ、シューズ内で足の動きを妨げないようにします。さらにフットベッドがアーチを補助するので、シューズ内の足の位置が安定し、クリート位置を決める基準を作り出します。

プラスチック製の骨格を持つのがidmatchのフットベッド

Q:他のスポーツ用フットベッドとも異なる?

A: 競技特性の違いで、異なるフットベッドが必要です。たとえばアルペンスキー競技用は競技時間が短く、スキーを高い精度で動かす機能が求められます。結果、最高のパフォーマンスを発揮するのは90秒間だけです。

前述した通り、ランニングやバスケットボールといったスポーツとも足の使い方や競技時間が異なります。同じ人、同じ足でも、最高のパフォーマンスを求めるなら、それぞれのスポーツの環境に適したフットベッドが必要なのです。


ペダルの役割

大半のペダルはクリートでクリートの可動と固定を選べる

Q:クリートのフローティング機構は必要ですか?

A:理想的なペダリングに必要不可欠ではありません。ですが、同時にデメリットもない。フローティングシステムがヒザの痛みを解消するというセールストークは有名ですが、痛みが解消したとしても、それは根本的解決ではなく、一時しのぎ的な対症療法でしかありません。

足が正しいアライメントに設定されていれば、フローティングシステムのメリットはペダルを踏み込む時ではなく、引き足の時にフリーに動かせることにあります。ただ、それも選手たちはトレーニングを積み、フリーでなくても問題が生じていません。 

Q:フローティングシステムには意味が無い?

A:繰り返しますが、足、ヒザ、股関節が正しいアライメントにあれば、固定でもフローティングクリートでも問題ありません。最適な状態であれば足は左右に動かないのです。大切なのはクリートをフロートさせることではなく、左右への動きを必要としないフィッティングです。

ダイビング競技の選手がジャンプボード上に立つとき、足の前部、中足骨中央部でボードに釘付けになったようにピタッと安定して立ちます。サイクリングにおいても、バランスがとれていれば足はブレないのです。

Q:引き足で有効な理由は?

A:サドルに座っているペダリングをしているとき、大腿骨が動く角度は骨頭部が骨盤側面のソケットの中で上下するだけです。しかし、ダンシング時は、骨盤と大腿骨の角度は大きく変化します。

ダンシングしているとき、骨盤のソケットの中でボール状の大腿骨頭は、より自由に動きます。大腿骨には外向きに回転する動きが加わりますが、ペダル上の足の間隔は同じです。そこで、自然とカカトが内側を向く動きが発生します。全身のシステムが動きを変えた結果として、それは自然な動きなのです。そして、このときフローティングシステムの恩恵があるのです。

Q:デメリットがないなら……フローティング>固定クリート?

A:ダンシングするのは短時間ですから、すべてが機械のように完璧でなくても問題は発生しません。サイクリング時の痛みは、「圧迫✕時間」の掛け算です。「強い圧迫✕短時間」は大した問題ではありません。「弱い圧迫✕長時間」が問題を発生させます。

固定クリートで加速時に30秒間ダンシングしても、足、脚、身体全体にとってさして問題ではありません。バイクを左右に振って走ることで、身体は足とバイクの相関関係を調整しているのです。

サイクリングは長時間の運動ですから、ベスト・ポジションとは長時間維持できるポジションであることが前提となります。idmatchのテストで、パワーを測定しないのはそれが理由なのです。

その一方、ヒザや肩の横方向のブレは測定し続けています。それは足と脚の協調性をチェックするためです。クリート位置・角度の設定、フットベッドとサドル選び、サドル位置の設定。これを正しく行なうことがバイクフィットの90%の重要性を占める、と言いましたが、クリートを左右へスライドさせる遊びは、身体を機械的にとらえすぎた発想です。

関節は複雑な構造を持っています。単純に線的な動きをする機械ではありません。ドアのヒンジではないのです。一連の協調性が取れていれば、足の動きは安定します。

Q:痛みの解消方法は?

A:走行中に痛みを感じるのであれば、どこかに狂いがあるということ。足首、ヒザに痛みを感じるなら、バランスを整える必要があります。しかしながら、バランスは人によって違います。バランスがいい特定のポジションがあるわけではありません。

天秤の両端に同じ重さが載っていれば中央が支点になります。でも、左右の重さが違えば、支点は移動します。自転車で走っている状態を正面から見れば、同じことが走行中にも起きているのです。そのため、各自に合ったバランスを見つけ出すことが、根本的な問題解決につながります。
 
さきほど、スキー競技の話をしました。トラック競技のスプリント系種目でも同じことが言えます。快適性を犠牲にしても、数分間だけ耐えられる工夫が必要になります。つまり競技特性と競技時間が必要なものを決めるのです。ロード選手とは異なり、首やスネの小さな筋肉まで含めて全身の筋肉を総動員してペダルにパワーを注ぎます。

足とペダルの正しい位置関係

Q:優れたペダルの特徴とは?

A:1つ言えるのは、ペダルの幅が広いほど、足・脚はリラックスできるということです。左右幅が極端に狭いペダルを想像してみてください。ペダリングする度、足はバランスを保つために筋肉を総動員することになります。そういう意味では、幅の広さは優れたペダルの条件のひとつだと言えます。 

Q:ほかに気にすべきことは?

A:前後長に関しては短いよりは長い方がいいですが、近年の剛性が高いカーボンソールのシューズであれば、前後の長さは重要な要素とは言えないでしょう。シューズが剛性に劣るプラスチックソールであれば、ペダル踏面積が大きいことが安定性に直結します。

また、ペダルシャフトの中心と踏面の距離も、ペダル選びをするときに忘れてはならないポイントです。この距離が大きいと、足関節の背屈・屈曲が起こりやすくなります。つまり厚みが小さいほど足首が安定します。

idmatch 取扱店
https://www.podium.co.jp/brands/idmatch-bikelab/shop


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!