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CINELLI2019.2.20

アントニオ・コロンボ スピーチ「アティチュードとしてのデザイン」

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アティチュードとしてのデザイン



今ご覧いただいたムービーは、チネリの若い友人たちが作ったものです。作品としては粗削りですが、
サイクリングの世界におけるわが社の立ち位置、中心的な価値を見事に表現してくれました。

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後ろのスクリーンに映し出しているのは、私の人生にまつわる400枚のスライドです。
40年以上にわたってデザインとテクノロジーと関わってきた人生です。

まず、私自身はデザイナーではありません。
アーティストでも、エンジニアでもありません。しぶしぶ経営者になった人間です。
23歳の時に父が亡くなり、鋼管業を引き継がざるを得なかった人間です。
それまではアイルランドでフライフィッシングのためのB&Bを開業したいと思っていました。
家業を継いでから、自分のクリエイティブな情熱のはけ口を、コロンブスという自転車用鋼管事業を通し、
1977年から1978年にかけてチネリを買収することで見つけました。

デザインの世界へのアプローチは、学校教育ではなく、1970年台の重苦しい政治的環境のなかで、ロックミュージック、カウンターカルチャーを通して経験したものです。
ミラノの少年には縁遠い文化です。しかし未来を感じる文化でした。
美の世界を通して新しい生き方を表現するためにカラーやデザインを、プロジェクトではなく倫理としてとらえていたのです。

このアプローチを通して、自転車のなかに、完璧な機能性と、表現しきれないユートピア、社会的な可能性を見出しました。
自転車はすでに技術的には完成の域に達しているが、自分がやるべきことは、ディテールや自転車の使い方にたずさわること。
その可能性を深く理解することだと思いました。

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自転車へのさまざまなアプローチ方法のベースを作り出す必要を感じていました。
自転車の生産はただ自転車を作るだけ、自転車用鋼管の生産はただチューブを作るだけで終わってしまう恐れがあります。
しかし、私は父の鋼管メーカーが行っていた、偉大なデザイナーたちの作品、チューブで作る家具の事業を見、そこに可能性を見出しました。
チューブ作りはチューブ生産だけではなく文化の創造にもつながる。これはあらゆる事業家にとって大切な教訓だと思います。

チネリがヨーロッパでははじめてマウンテンバイクを作ったことは、この考え方がもらたした結果です。
マウンテンバイクはまったく新しい自由な精神の象徴であり、私にとってはチネリの方向性を決定づける決断だったと考えています。

自転車選手でなくデザイナーでもなかったからこそ、自転車と他の世界の橋渡しができたと考えています。
ミラノ文化の影響をたっぷり受け、「なぜ?」と問うのではなく「やってみよう」と行動に移すことの重要性を学びました。

この姿勢が、さまざまな新製品につながりました。
スピナッチというハンドルエクステンションであり、RAMカーボンハンドルであり、オリンピックで勝利をおさめたレーザーもそうです。

エンジニアたちに対しては、着想を与えるという形で協力しました。
自転車へのアプローチの仕方、製造方法に関する発想、ブランドとして最高レベルの技術力を持つことにつながります。

80年代、90年代を通じて、チネリこそ、自転車に付加価値を付け加えたブランドといえるでしょう。
アーティストやデザイナーたちとの協力を経て、かつてなかったものを作り上げました。

2000年代に入り、やっと実を結び始めました。
若い世代が自転車にふたたび興味をもち、ロードバイクがさまざまな形に進化しました。
都会向けの自転車、カーゴバイク、トラベルバイク等々になり、文化的にも大きな影響を与えました。
スポーツのためでも輸送のためだけでもない、自転車のさまざまな可能性を引き出したのは、1980年代1990年代の文化的な活動の積み重ねがあったからなのです。
チネリのサイクリングキャップだけで全世界で年間10万個以上売れました。

サイクリングキャップは、まさに、私はなにも発明していない、という一例です。
キャップ自体は100年以上前から存在します。しかしチネリのキャップが呼び起こす感情は、私が「人間テクノロジー」と呼ぶものです。
わが社はデザインそのものなのです。
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若者のカルチャーのなかでのデザイン、とくに新しいサイクリングカルチャーは製品と消費者の間に横たわるすべてのものを意味します。
モノの認識を含む新しい提案です。

いま、チネリにとってのデザインとは、1人のライダーをハッピーにすることが我々の幸せである、という意味なのです。

HAPPY TO MAKE ANOTHER RIDER HAPPY

どうすればこれが可能になるのか? 
多くのことが必要です。ソーシャルメディアへの参画、製品の安全性を向上させること、コミュニティを作ること、美的に洗練させること、若者たちが新しい自転車の使い方を見つけるお手伝いをすること。

アレッサンドラ・クサテッリの作品、Pedalorにこれまでの話が凝縮されています。
この彫刻はル・コルビジェの作品Modulorからインスピレーションを受けて製作されたものです。
Modulorのもとになったのは、ダビンチの人体図なのです。製品が象徴になるとき、デザインが真実となり、アートに近づくのです。